フランス料理と日本料理、ものづくりに生かす引き算の美学
ディクラッセには、バロッコ “barocco” というテイストのラインナップがあります。
そもそも、なぜバロッコをディクラッセのブランド軸の一つとしたのだろう? 社長室でデッサンをしていた遠藤に、クリエイティブの源流を探るべく色々訊いてみました。
バロックという単語、イタリア語ではバロッコ“barocco”と呼ばれています。
ディクラッセでは、「バロック “baroque” 」と「ロココ “rococo” 」をあわせた独自のことば、ととらえています。
美術史では、このふたつ時代背景・美術的潮流はかなり近いこともあり、ディクラッセでは、重なる時代様式と解釈しています。
商品開発上のキーワードは、以下の4つです。
- アンティークのような輝き
- ビンテージ調の深みのある素材感
- 時が経っても輝き続けるシャンデリア
- 古き良きものを愛する人のためのデザイン
でも、これって、いわゆる「バロック “baroque” 」の意味とイコールじゃないな…
疑問がさらに深まりました。
そこで、「バロック」という言葉を掘り下げ、連想されるものを考えてみました。
学校の教科書どおりに考えると、「バロック “baroque“」といえば、近世ヨーロッパの繊細で官能的、贅を凝らした装飾のある家具、豪華な建築や彫刻などが、頭をよぎります。照明では、宮殿にあるようなクラシカルなシャンデリアをだれもが想像すると思います。
ディクラッセでも、シャンデリアはこれまで何種類もリリースしてきましたが、それがイコール「バロック“baroque” 」ではないはずです。伝統的なものに、どのような「ひねり」を加えているのか、をさらに深掘りしてみました。
バロッコシリーズ、シャンデリアの直系開発アイテム、アルコ シャンデリアを例にとってみます。
その開発には、クリエイティブを生業とするデザイナーならではの発想が秘められていました。華やかな時代の輝きや意匠をリスペクトしつつも、再解釈の素材として新たなエッセンスを注ぎ込むことで、アルコ シャンデリアは、ディクラッセの中でも確固たる位置付けの照明になりました。。
では、どうやって再解釈したのでしょうか?
その答えは、「削ぎ落とし」でした。
装飾を削ぎ落とすことで、金属の素材感や、シンプルな曲線が際立ちます。おなじシャンデリアでも、その解釈、素材の活かし方、視点をかえることで、シンプルかつモダンなデザイン照明へと昇華させていたのです。
「削ぎ落とし」という言葉を聞いて、これは料理と似ているな、と思いました。
伝統的なフランス料理は、ふんだんにバターを使ってソースを作り、素材にたっぷりかけて、つくられます。テーブルに置かれた料理は、ソースという装飾に包まれ、味の折り重なりを楽しむことができます。
日本料理は、素材本来のうまみを際立たせるために、下ごしらえをして、洗練された料理になります。包み込む装飾はなく、素材の苦味、えぐみ、臭み、灰汁を取り除く、という「削ぎ落とし」がはたらいています。
フランス料理と日本料理、一方で伝統的なバロック調シャンデリアとディクラッセのアルコシャンデリア。
削ぎ落とし、「引き算の美学」が、身近なところで機能していることに、ものづくりの面白さを感じています。
商品部 関口