ここちよく暮らすために必要な「あかり」とは?
先日、北欧ジャーナリストとして活躍されている森百合子さんと、トークショーを開催させていただきました。
テーマは、”北欧のあかり、日本のあかり” 〜照明で自分らしい心地よい暮らしをつくる3つのヒント〜。
今回は、この「3つのヒント」について、ご紹介したいと思います。
照明で自分らしい心地よい暮らしをつくる3つのヒント
ディクラッセがおすすめする「照明で自分らしい心地よい暮らしをつくるヒント」は、以下の3つ。
ヒント1:オレンジ色のひかりで照らす
ヒント2::実は「暗い」が大事!
ヒント3:多灯付けをやってみよう
1. オレンジ色のひかりで照らす
わたしたちディクラッセは、「オレンジ色のひかりは、心地よい暮らしを作るために欠かせないもの」と考えています。そしてそれには、太古から続く人間の光のサイクルが関係しています。
人は、20万年も前から、「朝日 → 昼光 → 夕日・焚火 → 夜・星」という自然のひかりのサイクルの中で、暮らしを営んできました。
「目覚めに朝日を浴びて、交感神経を活発にし、昼の強い光のもとで活動し、夕陽や焚火を見て、そろそろリラックスしようと副交感神経のスイッチを入れる」というように、人は、ひかりのサイクルに応じて、その活動や脳のシステムを切り替えて生きてきたのです。
また、朝の強い光によって、サーカディアンリズム(25時間周期の体内時計)を24時間に脳内変換することで、24時間周期の現実時間に適応しながら生きてきました。
しかし、ここ数十年、日本では白い照明、とりわけ天井に直付けするシーリングランプが主流になってきました。人々は、一日中白く明るい光の下で暮らすことが多くなり、夕日や焚火のオレンジ色のひかりを見ることが少なくなってきました。
このことは、免疫力低下や、がんを発症する人の多さ、若い人の前頭葉未発達などに影響があるのではと考えられています。また、従来、朝の強い光によって行っていたサーカディアンリズムの24時間変換がうまく行えず、体内時計が現実の時間とずれていってしまっている人も珍しくはありません。
さらに、近年の研究では、「睡眠ホルモンであるメラトニンが、オレンジ色の光の下では多く分泌され、白色の光の下では少なくなる。」こともわかっています。
現在、日本では寝る直前まで、白く強い光を浴びるのが当たり前になっていますが、この習慣が、睡眠ホルモンメラトニンを減少させ、結果として、睡眠障害を増加させている可能性があるのです。
私は、このような脳科学を勉強する中で、「照明と健康」の観点から、照明デザインの一貫として、オレンジ色のひかりの重要性を改めて感じました。
仕事柄、海外に行くことが多く、「海外に行くと街のオレンジ色の光に安らぎを感じるものの、東京に帰ってくると突然の強烈な光にたじろぐ」というような経験から、身をもって光の違いを感じるようになったことも、オレンジ色の照明にこだわるようになった背景のひとつです。
そして、多くの照明メーカーが、白色の照明を量産する中で、「ディクラッセでは、オレンジ色の照明を作っていこう」と考えたのです。このように、心のリラックスと健康の観点から、ディクラッセでは、夕陽や焚火をイメージしたオレンジ色の照明づくりを行っています。
2. 実は「暗い」が大事!
ディクラッセの照明を見た方からは、「もっと明るい照明を作ればいいのに…」「なんで明るい照明作らないの?」といったご要望をいただくことがあります。
たしかに、生活に必要十分な明るい照明がひとつ天井にあって、それが手元のリモコンで操作できれば、便利なことは間違いありません。
しかし、私たちは隅々まで明るくすることに重きを置いていません。
大切なのは、「心地よい明るさ」だと考えるからです。
たとえば、部屋を暗くして、キャンドルのあかりだけで過ごす時間。北欧ではヒュッゲのひとときとして、このようなリラックス空間が生活の中にしっかり根づいています。
また、高級ホテルやリゾートホテルの、暖かくやや暗い灯り。ニューヨークのレストランでは、低い位置に照明をつけてテーブルの上だけを直接照らし、テーブルからの逆反射で、やんわりと周囲を照らす、なんてところもありました。
そんな空間は、想像するだけで、なんとなく気持ちが落ち着くような気がしませんか?「ちょっと暗いくらい」が、実際にはちょうど良いこともあるのです。
部屋の一部を照らす暗めの照明は、リラックスできる空間を生み、家具・調度品などのインテリアの陰影も楽しむことができるほか、部屋の無機質な生活感を限りなくオフの状態にもっていくことができます。
ディクラッセの照明も明るすぎず、陰影が出て空間が生えるようにデザインしています。ちなみに、多くの日本人は「暗いところで勉強すると目が悪くなる」と信じていますが、これは実は迷信のようなもの。科学的に実証されていません。
海外の人は全く知らないこの迷信も、日本と海外との照明の違いに関わっているのかもしれませんね。
3. 多灯付けをやってみよう。
日本の住宅に多い、天井直付けの白い照明。夜は部屋を隅々まで照らしてくれて、便利です。一方で、夜のオフタイム。直付けの白い照明器具1つだけでは、リラックスすることができません。
夜のリラックスのひとときは、直付けの白い照明ではなく、暗めのオレンジ色の照明で過ごしたいもの。そこでおすすめしたいのが、多灯付けです。
アウロ ウッド ペンダントランプ (Auro-wood pendant lamp)
リラックスしたい就寝前には、天井直付けの白い照明を消し、暗めのオレンジ色の照明を複数つけてみてください。
ペンダントランプとフロアランプ、あるいはテーブルランプを併用したり、ペンダントランプを複数つけたりと。その組み合わせは自由自在。いつもの部屋が、陰影が映えるリラックス空間へと変わります。
照明のコーディネートを楽しむのも、多灯付けの醍醐味!
かつて、イタリアの友人に「なんで日本では夜の光を楽しまないんだ」といわれたことがあります。確かに、欧米諸国と違って、日本では時間帯によって光を調整することが少ないように思います。
欧米では、多灯使いで、その時々に「ちょうど良い」ひかりへとコントロールするのが当たり前。こまめに光を調整します。
これができれば、夜でも昼のような日本の住宅や街も変わるかもしれませんね。
「多灯付けに挑戦したいけど、シーリングコンセントが足りない」という方には、後付け型のライティングレールがおすすめ。1つのシーリングコンセントで複数の照明を取り付けられる便利なアイテムです。照明の取り付け位置もレール内で調整できるので、「理想の位置にシーリングコンセントがない」という方もぜひ活用してみてください。
ワンタッチライティングレール
ホイットニー S ペンダントランプ (Whitney S pendant lamp)
明るさではなく、心地よい照明選びを
照明で自分らしい心地よい暮らしをつくるための3つのヒントをご紹介しました。ひかりには、かたちがありません。
しかし、生活において重要な役割を果たしていることは確か。照明によって、わたしたちの心と体は大きく変わります。
ディクラッセではこれからも、取り入れることで何かが変わる照明づくりを大切にしていきます。みなさんもぜひ、照明をプラスしたり時間帯によってひかりを調節してみたりと、少しだけ照明にこだわってみてください。
デザイナー 遠藤 道明